3-4-0. 前払費用とは

 前払費用で一番イメージしやすいのは保険料だろう。例えば1年間の保険料が120,000ルピーだとする。支払いは初月に全額120,000ルピー保険会社へ支払うが、会計上認識する初月の費用は10,000ルピー(120,000ルピー÷12カ月)である。つまり10,000ルピーの費用が12カ月続くように処理をする。このような会計処理をすることで月次決算書の保険料を適切に表示することができる。しかしこの会計処理は不正をする側からする都合がいい。なぜなら不正な費用を目立たなくすることができるからだ。

 具体的に数字を使ってみよう。従業員が120,000ルピー不正をしようとしている場合、どちらの会計処理の方が目立たないであろうか?

 当然②の方が不正は発覚されにくい。①の場合、4月は不正が発覚されないかもしれない。しかし5月がゼロになった時、「あれ?4月の120ってなんだったっけ?」という疑問が発生する。もしかしたら5月でなくても、6月以降も同じような疑問を持たれ、遡って調査されるリスクが高い。しかし②の場合、そのような疑問を持たれる可能性は低いだろう。前月との増減分析をした結果、「前月の費用とそんなに変わっていないね」と見過ごされるからだ。

 よって不正をしようとする者は間違いなく②を選択する。しかも②を選択することは会計基準でもあるべき処理の仕方である。この処理に関して反論する人間は誰一人いない。つまり会計基準を守ることで不正が発見されにくくなってしまうのだ。

 企業側としては突発的な費用を出来るだけ避け、平準化したいという思いがある。前払費用の処理はこの思いに応えるが、その裏には不正を見にくくしてしまう闇があることも注意しておく必要があるだろう。

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