3-3. Supplyが行われた州(サービス)
サービスは目に見えないため「サプライヤーの州」及び「Supplyが行われた州」は非常に特定されにくい。そのためCase by Caseで検討せざるを得ない。まずは「サプライヤーの州」を説明していく。
サプライヤーの州とは?
「サプライヤーの州」を特定するために「サプライヤー」の定義を理解する必要がある。
“Supplier” in relation to any goods or services or both, shall mean the person supplying the said goods or services or both and shall include an agent acting as such on behalf of such supplier in relation to the goods or services or both supplied (S 2(105))
この定義から仮に主たるサービス提供者が代理人を使ってサービスを提供したとしても、主たるサービス提供者がサプライヤーとなる。 例えば、X社はY社にエアコンのメンテナンスを依頼し、Y社はメンテナンス業社を手配した場合、実際にサービスを提供したのはメンテナンス業社であるが、GSTではサプライヤーはY社となる。
それでは具体的に「サプライヤーの州」の定義を解説する。GST法では具体的に4つ説明している。
(15) “Location of the supplier of services” means,-
- Where a supply is made from a place of business for which the registration has been obtained, the location of such place of business;
GST 登録されたビジネスの拠点からSupplyされた場所 - Where a supply is made from a place other than the place of business for which registration has been obtained (a fixed establishment elsewhere), the location of such fixed establishment;
GST登録されたビジネス拠点以外で固定された拠点からSupplyされた場所 - Where a supply is made from more than one establishment, whether the place of business or fixed establishment, the location of the establishment most directly concerned with the provision of the supply; and
複数の拠点がある場合には、最も直接的にSupplyされた場所 - In absence of such places, the location of the usual place of residence of the supplier.
上記a,b,cどれにも該当しない場合は、サプライヤーの住居地
a place of businessは通常ビジネス活動を行っている場所と考えていいであろう。例えば会計監査サービスであるが、会計士はクライアントの地及び事務所で監査業務を行う。この場合、会計士の事務所登録場所が「サプライヤーの州」となる。また医者は病院で診察したり、時に患者の家で診察したりする。この場合も病院の場所が、「サプライヤーの州」となる。さらに製造業社で、会計・財務等の本社機能はハリアナ州、実際に製造活動をしているのはラジャスタン州という場合、両方が「サプライヤーの州」となりうる。その場合は提供する物品又はサービスにより直接的な行為を行う場所が「サプライヤーの州」となる。
税務調査官が「サプライヤーの州」を特定するのに参考にするのは契約書と考えられる。そのため契約書で「サプライヤーの州」を再確認しておくのが望ましい。
Supplyが行われた州とは?
原則、サービスを受けた者の州が「Supplyが行われた州」となる。しかしサービスの内容によって例外が存在することに注意する。主な例外は以下の通りである。
不動産に関わるサービス(IGST 12(3))*1 e.g. 建築デザイン、不動産会社、ホテル
Supplyが行われた州:(インド国内)不動産の存在する州 、(インド国外)サプライヤーの州
*1 不動産に関わるサービスの例 ;ハリアナ州の建築家X氏がラジャスタン州Y氏にラジャスタン州の建築デザインサービスを行った場合、ラジャスタン州が「Supplyが行われた州」となるが、同X氏がニューヨークの建築物をデザインした場合は、サービスを受けるY氏の地ラジャスタン州が「Supplyが行われた州」となる。
レストラン、ケータリングサービス、フィットネスクラブ、美容院等(IGST 12(4))
Supplyが行われた州:実際にサービスを実行した州
イベント(IGST 12(6))
Supplyが行われた州:催されるイベントの州
物流サービス(IGST 12(8))*2
Supplyが行われた州:物流サービスを受けた者のGST登録地 もしGST登録していない場合、物品の到着地
*2 物流サービスの例;物流会社X社はマハラシュトラ州にあり、GST登録をしている。Y社(グジャラート州で登録)はX社に、ムンバイにある在庫をプネの倉庫に運ぶよう依頼した。この場合Y社はグジャラート州でGST登録されているため、グジャラート州が「Supplyが行われた州」となる。しかし、もしY社がGST登録をしていない場合には、物品の到着地マハラシュトラ州が「Supplyが行われた州」となる。
車両、船舶、飛行機、列車サービス(IGST 12(9)&(10))
Supplyが行われた州:スタート地点
提供者又は享受者が海外の場合の仲介サービス(IGST 13(8)(b))
Supplyが行われた州:サプライヤーの州
この例外は特に注意が必要である。例えば日本親会社がインド顧客に物品を直接販売し、インド子会社が日本親会社からコミッションを受け取るケースがある。要するに日本親会社はインド顧客に物品販売後のアフターサービスを提供しにくいため、インド子会社が顧客サービスを提供する場合やインド子会社がインドで日本親会社の営業サポートを行う場合が考えられる。
このような場合、インド子会社が日本親会社にサービスを提供していることから「サービスの輸出」と一見思われるが、この例外条項があるが故に「サービスの輸出」に該当しないことがあることを覚えて置いてほしい。
参考:この条文は裁判で争われましたが、2023年にボンベイ高裁で有効と判断されています。さらに2025年2月にGST評議会事務局が仲介の供給地見直し検討グループを設置しており、将来変更の可能性は議論中です(現時点では現行ルールが有効)。
結論
サービスのGST課税を考える時、必ず「Supplyが行われた州」に注意していただきたい。原則は「サービスを受けた者の州」であるが、例外もあると。特にサービスの輸出の場合はGSTが無税となることから、原則だけで考えず例外に該当しないかを慎重に検討する必要がある。そうでないと数年後、多額のGST追徴課税を食らう可能性がある。
次回は輸出入の場合を説明していこうと思う。