3-3-2. 過剰な請求
私はインド零細企業を経営しており、日系企業X社へ材料を供給している。「材料販売価格には運送費用も含む」とし、X社は発注書にその旨を記載していた。しかしガソリン価格が高騰し運送費用も上がったため、運送費を何とかX社に負担してもらおうと考えた。
しかし今さらX社へ交渉するのも面倒であるため交渉せず、請求書に材料販売価格とは別にサラッと記載し請求してみた。X社が発注書をもって請求書をチェックしなければ、バレやしない。バレなきゃ儲けもんだし、バレたら「あっ…間違えちゃった」と適当に誤魔化せば問題ないであろう。
コンサルタントの見解
このケースは数量ではなく、価格による不正である。このケースも「3-3-1. 過剰な入荷数量及び過少な仕入数量」同様にレストランで起こりうる。
出張が多い私は宿泊先のホテルで一人日本食レストランに入ることがある。あの時も一人で晩御飯を食べていた。私が注文したのは親子丼である。日本食レストランに行くと結構な頻度で親子丼を食べる。なぜならインドで肉を食べるなら、やっぱり鶏肉が一番と思うからだ。日本食には羊肉はないし、牛肉は硬くて美味しくない。そのため鶏肉のライバルと言えば豚肉だ。
しかし豚肉には都市伝説がある。5年ほど前に町中でゴミを食べている豚の家族をよく見かけたが、最近は不思議とあまり見かけなくなった。一体豚の家族はどこへ行ってしまったのだろうか?もしかしたら…と思うと豚肉も食べる気がしなくなる。
さらにメニューをみると豚肉料理より、鶏肉料理のほうが圧倒的に多い。つまり鶏肉は頻繁に仕入と販売を繰り返していることが予測できる。「豚肉の回転期間よりも鶏肉の回転期間は短い=鶏肉の方が新鮮」という方程式が成り立つのだ。
ということでカツ丼より優先的に親子丼を注文してしまう。
メニューを見ると「親子丼…450ルピー」。別に500ルピーであろうと親子丼を注文するのだが、念のため値段を確認した。
そしてお会計。ウェイトレスが持ってきた請求書には500ルピーとなっていた。「あれ?メニューには450ルピーと書いてあったような…」と思い、メニューを確認するとやはり450ルピーとなっていた。ウェイトレスを呼びつけて
私:「親子丼は450ルピーじゃないの?請求書には500ルピーとなっているけど…。間違っていない?」
ウェイトレス;「先週まで450ルピーでしたが、値上げをして500ルピーになりました。だから500ルピーで間違いありません」
私:「へぇーそうなんだ…」
と一瞬、彼女の主張に妙に納得させられそうになった。しかしふと我に返り、
私:「メニューに450ルピーと書いてあるんだから450ルピーにするべきだ!」
と反論した。彼女は怪訝そうな顔をし、どうやら私の主張が理解できないらしい。そして彼女は
ウェイトレス:「他の日本人は何も言わず500ルピー払ってるけど…」
と言い出した。こんなやり取りが30分ほど続き、レストランの責任者を呼びつけて何とか私の主張を押し通すことができた。
「一体、どれだけの日本人が50ルピーを搾取されたのだろうか…」と同胞として寂しい気持ちになりつつも、たかだか50ルピーで不機嫌になりながらも30分もかけてしまった自分の器の小ささに情けなさを感じた。
前回「3-3-1. 過剰な入荷数量及び過少な仕入数量」では数量による不正を説明したが、当然数量だけでなく金額もしっかりと確認するべきである。不正する人間はあらゆる角度からお金を搾取しようと画策してくるのだ。全く意味不明な理由をつけてでも。