3-3-0. 棚卸資産

 棚卸資産は「単価×数量」で計算される。そのため「単価」と「数量」を分けて検討する必要がある。「単価」はそれほど難しくない。購入単価が「単価」となるため、購入単価の妥当性を検討すれば済む。「数量」は「月初数量+購入数量(製造数量)-消費数量(販売数量)=月末理論数量」と「月末実施棚卸数量」とを比較し管理する。「月末理論数量」と「月末実施棚卸数量」との差を「棚卸差異」と呼ぶ。棚卸差異が発生した場合、その原因を追及する必要がある。残念ながら実務では棚卸差異が発生してしまうケースがある。棚卸差異原因は、主に以下の理由に限定される。

  1. 実務的に発生する差異
  2. 棚卸資産の記録ミス
  3. 実施棚卸のカウントミス
  4. 棚卸資産の不正流用

1. 実務的に発生する差異

 実務的に発生する差異とは、ビジネス上どうしても避けられない差異である。例えば材料Aを1Kg、材料Bを1Kg投入して製品を作ったと仮定する。一般的には2Kg(=1Kg+1Kg)の製品ができる。しかし実務では1.9Kgしか製品ができないこともある。差額0.1はどこに行ってしまったのか?それは作業屑になったり、棚卸資産の種類によっては蒸発してしまったかもしれない。つまり消息がはっきりしない差異がどうしても発生することがある。

2. 棚卸資産の記録ミス

 棚卸資産は日々以下のように動き続けている。

 そのため棚卸資産が動くたびに適時適切な記録が要求されるが、これがなかなか難しい。伝言ゲームのように情報がなかなか適切に伝わっていかないのだ。そして記録ミスがどうしても発生してしまうのだ。
記録をしているのがインド人であり、棚卸資産を動かすのもインド人。これ以上言わなくても、状況を察していただけるだろう。

3. 実施棚卸のカウントミス

  実施棚卸は棚卸資産がどれだけあるか実際に存在しているかを確認する作業だ。この作業は棚卸資産管理するうえで最も重要であると言って良い。実施棚卸の結果が次月のスタートとなるため、もし実施棚卸にカウントミスが生じると次月の棚卸資産も狂ってきてしまうからだ。

 インドで実施棚卸に立ち会ったことがある。一言でいうと酷い。まともに数が数えられない、人が読めるような数字を書かない、実施棚卸の最中に棚卸資産を移動させる。これではまともな実施棚卸結果を期待することができない。

4. 棚卸資産の不正流用

 従業員が棚卸資産を勝手に持ち出したら、当然棚卸差異がでる。

コンサルタントの見解

 まず会社が不正防止・発見するためにしなければならないのは、実施棚卸のカウントミスをゼロにすることだ。そのためには適切な実施棚卸のルールを作成し、ルールに従って実施棚卸をさせるよう教育するしかない。

 そして棚卸資産の記録ミスをゼロにするよう努力する。ミスしやすい従業員及び棚卸資産を特定し、人事異動及び棚卸資産の徹底整理をすることで改善されるだろう。

 この差異原因2点を潰すことができれば、棚卸資産の不正流用は発見しやすくなること間違いない。日本人駐在員であれば感覚的に実務的に発生する差異か否か容易に判断がつくはずだ。そうなると残りの差異理由は棚卸資産の不正流用しかあり得なくなる。そして不正流用が発見されやすい環境では流石のインド人も不正流用をしようとする気は失せるであろう。

 最後に棚卸資産の不正流用を直接的に防止するためには防犯カメラの設置が非常に効果的である。防犯カメラを設置することで防止効果になり、もし従業員が棚卸資産を不正に持ち出した場合、当該従業員を特定することもできる。

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