2. 不正にも「方程式」がある?

「不正」というと、複雑で見えにくい世界を想像する人が多いかもしれません。でも実は、不正にもある種の“法則”が存在するのです。不正を働く人間は、行動に移す前に必ずある3つのポイントを押さえています。それはまるで大学受験で使った「チャート式」の参考書のように、まず解法を知り、それを応用して具体的な問題を解く――そんなステップです。

社内の人間が不正をする時、考える3つのこと

  1. どうやって会社からお金を引き出すか?
  2. 引き出したお金をどうやって自分の懐に入れるか?
  3. 会社の帳簿をどう“辻褄合わせ”するか?

この3つをバランスよくこなすことで、いわゆる“完全犯罪”が成り立ちます。ただし、不正の手口によってどこが肝になるかは変わってきます。

手口その1:現預金を直接奪うタイプ

金庫の現金をこっそり抜き取る。あるいは会社の口座から自分の口座に送金させる。こうした「直接型」の場合、(1)お金を引き出す(2)懐に入れるは会計担当者であれば容易でしょう。しかし悩ましいは(3)帳簿処理。まさか「盗みました」と記帳するわけにはいきません。一時的に資産や負債を操作しながら、最終的に費用や損失としてこっそり処理する――このストーリー作りが腕の見せ所になります。

手口その2:間接的に利益を得るタイプ

こちらは巧妙です。取引先と結託して商品を高く売りつけ、差額の一部をキックバックでもらう。この場合、請求書は正規のものなので、(1)お金を引き出す(3)帳簿処理は問題なし。その代わり、(2)懐への還元を信用できる取引先としっかり話し合っておく必要があります。

社外の人間だけで行う不正は?

基本はシンプルです。「いかに不当な請求をするか?」これだけです。見積より高い請求、未完了サービスの請求、前受金を取って納品しない…。ただし、これらの不正は社内チェックがきちんと機能していれば、多くは防げます。

視点を変えれば見えるものがある

不正を防ぐためには、「加害者の視点」で考えることも有効です。一度、頭の中で「もし自分がやるなら?」と想像してみると、これまで見えなかったリスクや穴が浮かび上がってきます。
これから紹介する事例は、すべて実際にインドで起きた出来事をもとにしています。物語として読めるように仕立てていますが、どれも“現実に起こり得る話”です。だからこそ、読んで「他人事」ではなく「自分の会社でも?」と想像してほしいのです。

最後に

専門用語を極力避け、ストーリー仕立てにしたのは、「おもしろい」と思いながら読んでもらうため。多少不謹慎に感じる部分があるかもしれませんが、興味を持って考え、学んでいただくことが目的です。

“おもしろきこともなき世を面白く、すみなしものは心なりけり”(高杉晋作)

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