1.「うんち」と「カレー」と、ビジネスの究極の選択
いきなり恐縮ですが、皆さん「うんち」という言葉を口にしたこと、最近ありますか?
妙に響きが柔らかくて、あまり臭さを感じさせない不思議な単語。これを聞いただけで、思わず笑みがこぼれる人は少なくないはずです。特に子ども。保育園児や小学校低学年の子どもたちは「うんち」と聞いただけで大爆笑。ギャン泣きしていても、「うんち」と言えば、笑顔が返ってくる。ダメなら二回言う。視覚効果を狙って、うんちングポーズ付きで叫べば効果は倍増。ただし、その横で妻の視線は氷点下まで冷え込むのが定番です。
しかしこの“魔法の言葉”、副作用も強烈です。我が家の娘は、ココ壱番屋で「うんち」を連呼。飛行機で泣き叫ぶ子どもには寛容な人も、カレーの香りが漂う店内で「うんち」を連呼する声には眉をひそめる。周囲の冷たい視線を一身に浴びる父をよそに、娘だけが無邪気に盛り上がる構図。カレー屋で「うんち」。これほど居たたまれない状況はありません。
もう一つ、「うんち」で盛り上がる層がいます。それがインド駐在中の日本人たち。いい大人がなぜか集まっては「うんちトーク」に花を咲かせる。理由はシンプル。インドでの生活は、下痢との隣り合わせだからです。急な“野外活動”を余儀なくされることも日常茶飯事。そこで持ち上がるのが、「道路に対して前向きか?後ろ向きか?」という壮大な討論テーマ。駐在期間が長い人ほど、まるでスターウォーズのエピソードのように、「うんち話」が1から10まで続くのです。
そしてインドといえばカレー。「うんち」と「カレー」は切っても切れない関係。まるで光と影のように、互いを連想させます。この二つが揃うと、必ず話題は一つの“究極の選択”へと辿り着きます。
どちらを食べるか?
- うんち味のカレー
- カレー味のうんち
想像しただけで食欲が吹き飛ぶ二択。しかし、この質問には深い意味があります。私はこれを仕事で応用しているのです。
たとえば、顧客が「不正」と「コスト削減」のどちらを優先するかを探るとき。
置き換えるとこうなります。
- 高くても、不正のない取引を選ぶ
- 不正に目をつぶってでも、安さを取る
コンサルタントAとBがいたとしましょう。Aはキックバックを拒否するが、報酬は10,000。Bは8,000と安いが、そのうち1,000を従業員にキックバック。つまり実質7,000で動いている。利益だけ見ればBが“美味い”が、不正が露見した途端、その後味は最悪です。Aは“高い”けれど、後から不快な思いをすることはありません。あなたなら、どちらを選びますか?
そして必ず現れるのが、「両方とも食べない!」という第三の答えを出す人。しかし、選択を避けても、ビジネスの現場では最終的に何かを飲み込まなければならない瞬間が来る。そのとき差し出されるのが、避けたはずの「うんち味のうんち」だったりするのです。
インドでビジネスをする以上、この“究極の選択”は避けて通れません。私自身も何度も崖っぷちで、目を瞑り、鼻をつまみ、飲み込まざるを得ない場面がありました。そしてきっと、これからもそんな場面はやってくるでしょう。
だからこそ、私が提供する情報で、皆さんが少しでも「うんち味のうんち」を食べずに済むようにしたい。できれば「カレー味のカレー」を味わえるように。知らないうちに、とんでもないものを口にしてしまわないよう、事前に備え、選択の指針を持ってほしいのです。
究極の選択を迫られたとき、あなたはどちらを選びますか?
それとも、第三の道を探しますか?